最近は、ネット検索すると様々な情報が検索でき、さらにはAIが検索した情報を端的にまとめて表示してくれるようになりました。
これにより、自分自身の問題がどの情報の状況と一致するか(近しいか)について、容易に自分で調べることができるようになりました。
しかし、いざ「専門家に頼んだ方が良さそうだから、専門家に具体的な相談をしてみよう」と思って検索してみると、弁護士、司法書士、税理士、行政書士などなど・・・いろいろな専門家が「◯◯をサポートします」とアピールする記事が山のように出てきます。
その結果、「まぁ、いいか、、、」と、二の足を踏んでしまっている方も多いのではないでしょうか?
このコラムでは、行政書士に頼める仕事についてご説明してまいります。この記事をご覧になって、行政書士を活用するコツなどもつかんでいただけたら幸いです。
行政書士の仕事の特徴
行政書士が、どのような業務を行っているのかについては、残念ながらあまり知られていません。
例えば、
・慰謝料を請求したり、相手を訴えたり…という時は弁護士
・不動産や会社の登記をしたり…という時は司法書士
・就業規則を作ったり、社会保険の手続きをしたり…という時は社会保険労務士
・税額を計算したり、税務署への手続きをしたり…という時は税理士
というように、どんな仕事をしているのか端的に表現できる士業がある一方、行政書士は、「◯◯の時は行政書士」というものがいくつもあるのが特徴です。
これを、大まかにまとめると、
・国、都道府県、市町村等の役所に提出する書類を作りたい…という時は行政書士
・遺言書をつくったり、後見を頼みたい…という時は行政書士
・契約書や内容証明などの書類を作りたい…という時は行政書士
というふうになります。
さらに具体的な場面を想定して「◯◯の時は行政書士」というふうに言うこともできます。
この種類を数えると、1万種類以上あると言われています。
この種類の中には、皆さんにも比較的身近な事柄が多くあります。
この取り扱い業務の幅の広さが、行政書士の業務の特徴になっています。
行政書士が取り扱える仕事とは?
行政書士が取り扱える仕事は、行政書士法という法律で定められており、現在では下記のような業務になっています。(これらは一部の紹介であり、全部ではありません。)
官公署に提出する書類の作成や提出代行に関する業務
警察署関係
車庫証明、古物商許可、道路使用・占有許可、深夜酒類提供飲食店営業、特定遊興飲食店営業、接待飲食等営業、遊技場営業、警備業認定、運転代行業の許可や届出など
消防署関係
消防計画、防火(防災)管理者選任、統括防火(防災)管理者選任、防火対象物使用開始届、火を使用する設備等の設置届の届出や提出など
保健所関係
食品営業許可(飲食・食品製造販売・宿泊・民泊)、病院・診療所・施術所等の開設届出許可、化粧品等の販売許可、特定給食施設等の届出 など
業種ごとの許認可・届出関係
建設業、廃棄物収集運搬業・処理業(一般・産廃)、宅建業、貨物運送業、旅行業の許可や届出 など
その他の許認可・届出関係
自動車の登録や名義変更、電気通信番号(電話番号)の認可 など
補助金、助成金の申請
販路拡大、新商品・サービスの開発、業務効率化、賃金アップ、地域づくりなどを目的とした、経済産業省・中小企業庁、総務省、環境省、観光庁などの国の省庁や都道府県、市町村が所管する様々な補助金、助成金の申請 など
外国人在留手続
外国人の国内在留に関する申請取次 など
権利義務に関する書類の作成やその執行に関する業務
・遺言書、遺産分割協議書、死後事務委任、後見(成年・任意)に関する書類やそれらの業務の執行 など
・売買、賃貸借、請負、委任などの各種契約書の作成 など
・示談書、協議書、内容証明など、権利や義務に関する書類の作成 など
・就業規則、約款、定款など、決まり事(ルール)に関する書類の作成 など
事実証明に関する書類の作成に関する業務
・位置図、案内図、現況測量図などの各種図面類の作成 など
・議事録、会議資料などの記録書類の作成 など
・会計帳簿、貸借対照表、損益計算書などの会計書類の作成 など
・自動車登録事項等証明書、交通事故調査報告書などの事実に関する書類の作成 など
行政書士が取り扱えない仕事とは?
行政書士が取り扱えない仕事は、様々な法律により、概ね以下の内容となっています。
・紛争に関すること(弁護士の独占業務)
訴訟事件・非訟事件に関する書類の作成 など
・登記に関すること(司法書士の独占業務)
不動産登記申請書、会社設立登記申請書、供託書などの書類の作成 など
・労働や社会保険に関すること(社会保険労務士の独占業務)
労働及び社会保険に関する法令に基づいて厚生労働省等に提出する書類の作成 など
・知的財産権に関すること(弁理士の独占業務)
特許、実用新案登録、意匠登録、商標登録などの出願書類の作成 など
・税金に関すること(税理士の独占業務)
所得税、法人税、住民税、事業税、相続税等の申告書類の作成 など
・土地や家屋に関すること(土地家屋調査士の独占業務)
土地表示登記申請書、建物表示登記申請書等の書類の作成 など
・船舶に関すること(海事代理士の独占業務)
船員法に基づく船員の就業規則等の書類の作成 など
これらの業務については、士業の間では「業際(ぎょうさい)」とよばれており、各士業の法律(「設置法律」と言います)で定められた独占業務となっています。
各士業の独占業務を、その士業の資格をもたない人が、報酬を得て業として行うと刑罰の対象となっています。
従って、これらの業務に該当する相談を受けた行政書士は、相談者の了解のもと、協力関係にある士業に再委託をしたり、相談内容を紹介したりすることになります。
行政書士と他の士業の業務との関係を図にすると、以下のとおりとなります。
まとめると、行政書士に頼める仕事とは、「弁護士や司法書士、税理士など他士業の法的独占業務以外の仕事全部」、ということになります。
行政書士会では、このような行政書士の間口の広さを、街のお医者さんになぞらえて、「かかりつけ医」ならぬ【かかりつけ行政書士】と表現したりしています。
皆さんが、「ちょっと体調が悪いな…」と思ったら、自分の身近なお医者さんに診てもらうのと同じように、法律のことや自分自身の権利のことで「ちょっと、どうしたらいいかな?」と思ったときは、まずは行政書士に相談するのが良いかと思います。
病気やケガのときに、身近なお医者さんがその原因によって専門の大病院と連携しながら治療をしていくように、行政書士も寄せられた相談の内容を相談者様と一緒に考え、状況によっては専門の士業と連携しながら問題を解決していきます。
行政書士には専門がある
前のトピックで、行政書士に依頼できる業務が1万種類以上ある、と言うことをご説明しましたが、その内容はあまりにも幅が広く、一人の行政書士がそのすべてを取り扱えるものではありません。
多くの行政書士は、ある分野のスペシャリストとして業務依頼を受任する形をとっています。
そのため、「行政書士が取り扱える業務だと聞いた(見た)のに、ある行政書士に相談をしたら依頼を断られた」ということもよくあります。
ここでは、行政書士がどのような業務の組み合わせで専門性をもっているかということについて、よくあるパターンの一例をご紹介します。
事業者向け業務
Aパターン
・建設業、運送業、廃棄物処理業などの許認可申請
・自動車ナンバーの登録、車庫証明の申請
Bパターン
・風俗営業法に規定されている各種事業の許可申請や届出
・飲食店営業の許可申請
Cパターン
・消防法に規定されている各種許可申請や届出・提出
・飲食店や食品製造業の営業許可申請
Dパターン
・薬事法に規定されている各種許可申請や届出・提出
・飲食店や食品製造業の営業許可申請
Eパターン
・補助金や助成金の応募、交付、請求、事業化報告に関する申請
個人向け業務
Aパターン
・遺言や相続に関する書類の作成や業務の執行
Bパターン
・法定後見、任意後見に関する書類の作成や業務の執行
・遺言や相続、死後事務委任に関する書類の作成や業務の執行
Cパターン
・外国人の在留登録に関する書類の作成や申請取次
このパターンは必ずしもこの通りになっていることはなく、その行政書士の経歴や得意な業務によって、組み合わせはいくつもあります。
中には、網羅的にたくさんの分野を取り扱う行政書士もいます。
街のお医者さんが「内科」だけでなく「小児科」や「皮膚科」なども診察できますよ、と謳っていることがあると思いますが、これと同じイメージです。
お医者さんから「この症状は診察できない、他のお医者さんを紹介します」と紹介状を書いてもらうことがあるように、行政書士に相談をする際は「その業務は取り扱えない、他士業を紹介しますよ」というふうに案内されることがある、ということを覚えておいていただくとよろしいかと思います。
また、そのように正直に案内してくれる行政書士は、コンプライアンス意識が高く、信頼できる行政書士であると言えると思います。
行政書士に依頼しなくても自分でできる
このコラムでは、行政書士の特徴や仕事についてご説明してまいりましたが、行政書士に依頼できる業務は、行政書士に依頼しないといけない、というわけではありません。
各書類を作成するための知識と時間があれば、行政書士に頼らなくても自分で作成したり、提出したりすることができます。
行政手続・許認可申請@アスクプロに掲載している記事を読んでいただくと、行政書士に書類作成や提出代行を依頼しなくても済むかもしれませんので、興味のある記事に目を通していただけたらよろしいかと思います。
また、掲載記事を読んで、自分で取り組むのは難しいと思ったら、下記のリンクから、行政書士を探してみてください。