行政書士に遺言書作成をお願いすると費用はどのくらいかかる?

相続

近年、相続トラブルの増加から、遺言書を作成する人が増加しています。

しかし、遺言書を作成しようと思っても、以下のような不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。

  • 遺言書をどのように作成すれば良いかわからない
  • 自分で作成するべきか、遺言書作成のプロにお願いすべきかわからない
  • 遺言書作成を行政書士に依頼したら、高額な費用がかかるのではないか

この記事では、遺言書の種類や制度、遺言書作成を行政書士に依頼した場合の費用について、詳しく解説していきます。

遺言書とは?

自分の死後のことについて、生前に示しておきたい意思表示を遺言といい、書面に残したものが遺言書です。

遺言書には死後の財産の処分方法や相続などについて、自分の死後に誰にどのようなことを実行してほしいかを書き残します。

満15歳以上であれば遺言書を書くことを認められています。

遺言書を書くメリットとデメリット

遺言書を書く最大のメリットは、相続人間の争いを未然に防ぐことです。

相続においては、すべての相続人の意見が一致する必要がありますが、各相続人の思惑が絡み、争いに至るケースも少なくありません。

しかし、遺言書により、故人(被相続人)の意思が尊重され、争いになる可能性を軽減することができるようになります。

また、相続をする権利のある一定の親族(法定相続人)以外の人に財産を譲り渡すこともできるようになります。

一方、遺言書を書くデメリットは、手間がかかることです。

まずは、自身が持っているすべての財産を把握し、法律で定められた方式で作成する必要があります。

また、万一、法律で定められた要件を満たさない場合は、その遺言書が無効となってしまうため、専門家に任せるという方法もありますが、その場合、法定費用の他に専門家へ支払う報酬が発生します。

遺言書の種類

大きく分けて、普通方式遺言と特別方式遺言の2種類ありますが、

緊急事態以外の場合のすべての遺言は普通方式遺言を使い、ほとんどの場合がこれに当てはまるため、ここでは普通方式遺言について法律の条文を見ながら詳細を説明し、特別方式遺言については、簡単な説明に留めることとします。

普通方式遺言

普通方式遺言とは次に解説する3つの遺言書の方式を指します。

自筆証書遺言(民法第968条)

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全文又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。

この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

以前は、すべての遺言、日付、氏名を遺言者本人が自分で書き、押印する必要がありましたが、平成30年の民法改正により、財産目録については、自筆である必要がなくなり、パソコンで作成することも認められるようになりました。

他の方式と比較すると、費用が安く手間もかかりませんが、法定要件を満たしていないと無効となり、また、遺言書が発見されなかったり、内容を見られたりする恐れもあります。

なお、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用することにより、これらのデメリットをかなり軽減することが可能になりました。

公正証書遺言(民法第969条)

公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

一 証人2人以上の立会いがあること。

二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。

三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。

四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。

五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

以上のように、遺言者、証人、公証人のすべての署名、押印が必要となり、手間と費用が掛かります。

一方で、紛失や改ざんの恐れが少なく、公証人に遺言書の法的有効性を確認してもらえることや遺言執行時における家庭裁判所の検認が不要とされることは大きなメリットです。

秘密証書遺言(民法第970条)

秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

一 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。

二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。

三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。

四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。

第968条第3項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。

遺言の内容を親族に秘密にしておくことができ、本人以外が見ることなく封印してしまうため、内容の改ざんの可能性はあまりないです。

しかし、遺言の形式的要件を満たさず無効となる可能性が高く、また、本人が保管するため本人の死後に発見されない恐れもあります。

さらに、公正証書遺言と同様、公証人と証人の関与が必要なため、手間と費用がかかり、あまりメリットがあるとは言えません。

特別方式遺言

突然、死期が迫ってきたときなどに、緊急に遺言を作成する必要がある場合に採られる方式の遺言で、有効期限があります。

危急時遺言

a)一般危急時遺言

病気やケガ等により生命の危機が迫っているような状態で作成する遺言

b)難船危急時遺言

船舶や航空機などを利用していて、危難が迫っている状態で作成する遺言

隔絶地遺言

a)一般隔絶地遺言

伝染病などで隔離を余儀なくされている状態の人や、受刑者などが作成する遺言

b)船舶隔絶地遺言

航海中や船舶で長期間業務に携わっている場合など陸地から離れている状態の人が作成する遺言

自筆証書遺言保管制度

せっかく遺言書を作成しても、自身で保管していると紛失したり、死後に相続人に遺言書が発見されなかったり、改ざんされたりする恐れがあります。

そのような危険性を回避するために、令和2年7月10日に開始されたのが自筆証書遺言保管制度です。

それまでは、自筆証書遺言書は自宅などに保管しておく方法しかありませんでしたが、新たな選択肢として、法務局(遺言書保管所)に預けておくことができるようになりました。

以下の通り、この制度にはデメリットもありますが、それでもメリットの方が優っていると考えてよいでしょう。

自筆証書遺言保管制度のメリット

  • 遺言書の紛失を防ぐことができる。
  • 相続人などによる遺言書の改ざん、破棄、隠匿を防ぐことができる。
  • 遺言書の保管申請の際に、自筆証書遺言の外形的要件を満たしているか否かにつき、法務局のチェックを受けることができるため、形式不備のために無効となることを防ぐことができる。
  • 遺言書は画像データとしても長期間保存される。
  • 家庭裁判所の検認が不要となる。

自筆証書遺言保管制度のデメリット

  • 最初に手数料3,900円がかかる。
    ただし、保管料は無料であり、公正証書遺言の場合に、公証人や証人に支払う認証費用と比較すれば大きな負担ではない。
  • 保管できる法務局が限定されており、また、本人が自ら出向く必要がある。
  • A4サイズであることや片面のみに記載する必要があるなど様式に定めがある。
  • 法務局は、自筆証書遺言の要件(① 本文が自筆で記載、② 署名捺印、③ 日付の記載)をチェックするのみで、内容には関与しない。
  • 相続人などに原本が返却されない。

行政書士に依頼した場合の費用

上述の通り、遺言書には一定の法的要件があり、それを満たしていない場合は、せっかく作成した大切な遺言書が無効となってしまいかねません。

そのため、専門家を利用することも少なくありません。

専門家としては、弁護士、司法書士、税理士、行政書士が一般的です。

そのうち、行政書士が一番身近な存在と考えられます。

それでは、行政書士に依頼した場合、費用はどのくらいかかるのでしょうか。

行政書士の報酬額は、各行政書士が自由に設定できるため、一概には言えませんが、日本行政書士連合会が5年に一度全国的な報酬額統計調査を実施しており、直近の令和2年度の統計調査によりますと、「遺言の起案及び作成指導」の報酬額として、

以下の金額が掲載されています。

平均88,727円
最小値3,000円
最大値550,000円
最頻値50,000円

最小値と最大値とでは非常に大きな差がありますが、平均、最頻値の金額は、行政書士に依頼した場合の費用の目安にはなるかと思います。

まとめ

今回は、遺言書の種類や、遺言書を行政書士に依頼する場合の費用について詳しく解説しました。

相続は、仲の良い家族でも争いになり得る法律問題です。

しかし、遺言書を作成して、ご自身の意思を家族に伝える準備をしておけば回避できる可能性もあります。

遺言書のことでお悩みの際には、身近な存在である行政書士への相談を検討してみてください。

行政書士に相談してみる

この記事の執筆者:行政書士 脇田 幸雄(登録番号 第18190941号)