近年、高齢化が進むにつれて、身体が不自由な方の移動をサポートする介護タクシーの需要が増えつつあります。
車一台で開業できる手軽さから、ビジネスとして興味をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
しかし、介護タクシーを開業する際には、さまざまな手続きを経る必要があります。
こちらでは、介護タクシーを始めるにあたって必要となる「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)許可」の申請方法と必要書類についてご紹介します。
一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)許可とは
一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)許可とは、介護タクシーを開業するために必要な国土交通大臣の許可を指し、道路運送法第4条で規定されています。
一般的なタクシーやハイヤーを開業する際には一般乗用旅客自動車運送事業許可を取得する必要がありますが、介護タクシーを開業する際の許可は「福祉輸送限定」となる点が異なります。
具体的には、一般的なタクシーは利用者に限定がないのに対し、介護タクシーの場合は「要介護者」「要支援者」「身体障害者手帳の交付を受けている者」など、対象が細かく定められています。
また、使用車両も一般的なタクシーは制限がないのに対し、介護タクシーの場合は原則としてスロープや車いすのためのリフトなどを設置した福祉車両を使用する必要があります。
その他にも、車両数や運送引受、運行管理者、運転者などの要件が異なります。
一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)許可要件とは
一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)許可を取得するためには、「人的要件」「設備要件」「資金要件」を満たす必要があります。
以下で詳しく見ていきましょう。
人的要件
介護タクシーを開業する際には、
- 普通二種免許を保有しているドライバーがいること
- 運行管理者がいること
- 整備管理者がいること
といった人的要件を満たす必要があります。
なお、ドライバー・運行管理者・整備管理者は兼任することが可能です。
設備要件
介護タクシーを開業する際には、
- 土地と建物の使用権原が3年以上の営業所があること
- 事務所および休憩室・仮眠室があること
- 原則として、自動車の車庫が営業所に併設されていること
- 車庫のスペースが、車両の長さ・幅+1メートル以上あること
- 点検や整備、清掃のための水道などの清掃施設があること
- 車庫の使用権原が3年以上あること
- 1両以上の福祉車両(リフトやスロープなどを設置している車両)を有すること
- 運賃をメーター制にする際には、タクシーメーターを設置すること
といった設備要件を満たす必要があります。
資金要件
介護タクシーを開業する際には、申請日以降に「所要資金」の50%以上かつ「事業開始当初資金」の100%以上を、常に確保するといった資金要件を満たす必要があります。
所要資金とは、1年間に事業で必要となるコストを指します。
所要資金には、「車両費」「土地費」「建物費」「運転資金」「保険料」などが含まれ、これらのコストの半分以上の金額を保有していることを証明する必要があります。
事業開始当初資金とは、事業の開始から2カ月間で発生するコストを指します。
所要資金と算定する項目は同一ですが、賃貸借やローンなどがある場合には、2カ月分のみを計算します。
一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)許可取得の流れ
一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)許可を取得する手続きは以下の通りです。
許可申請書の提出
申請要件を満たしたことを確認し、営業所所在地を管轄している運輸支局に許可申請書を提出します。
申請書の様式に関しては、サイズ・枚数・必要部数などが指定されているため、事前にホームページなどで確認しておくのが望ましいといえます。
その際に、書類の不備や添付書類の不足がある場合には、補正指示を受けます。
そのため、ご自身で申請する場合には、申請の際に印鑑等を持参することをおすすめします。
審査基準に基づく審査
運輸支局に書類を提出したら、公示基準に基づいた審査が行われます。
通常は審査に2カ月から2カ月半程を要しますが、書類の確認や補正を求められた場合にはその分遅くなります。
許可処分 又は却下(審査基準不適合)
審査の結果、審査基準を満たしていれば許可処分を受けます。
なお、審査基準不適合の場合には、却下の対象となります。
許可証の交付 (登録免許税の納付)
許可処分を受けた場合には、許可証が交付されます。
交付式に出席し、許可証を受け取ります。この際に、登録免許税納付書を渡されるため、登録免許税(30,000円)を期限内に運輸支局へ納付します。
一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)許可申請に必要な書類
一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)許可申請に必要な書類は、以下の通りです。
項目分類 | 主な内容 |
---|---|
①事業用施設(営業所、車庫、休憩、仮眠・睡眠のための施設)に関する書類 | ・案内図・見取図・平面図(求積図) ・関係法令に抵触しない旨を証明する書類 ・使用権原を証明する書類 ※自己所有:不動産登記簿謄本など ※借入:賃貸借契約書(写)など ・車庫前面道路の幅員証明書 ・事業用自動車の使用権原を証明する署名 ※購入:売買契約書(写)または売渡承諾書(写)など ※リース:自動車リース契約書(写) ※自己所有:自動車検査証(写) |
②計画する管理運営体制 | ・確保人員 ・運行管理者・整備管理者の選任、指揮命令系統 ・労働時間や休息時間 ・点呼の実施体制 ・事故防止・事故処理・苦情処理体制 |
③事業開始に必要な資金の総額およびその調達方法を記載した書類 | ・任意保険の見積書 ・タクシーメーター器の見積書 ・申請日から直近の残高証明書(申請者名義) |
④欠格事由に該当しない旨を証明する書類 | ・欠格事由に該当しない旨の宣誓書 ・法令順守状況を証する宣誓書 ・社会保険に加入する計画を証明する書面 |
⑤運転者の運転免許証(両面写) | |
⑥申請者が既存法人の場合に必要な書類 | ・定款または寄付行為 ・登記簿謄本 ・最近の事業年度の貸借対照表 ・役員または社員の名簿および履歴書 |
⑦申請者が新設法人の場合に必要な書類 | ・認証済みの定款または寄付行為の謄本 ・発起人、社員または設立者の名簿および履歴書 ・株式の引受けまたは出資の状況および見込みを記載した書面(株式会社・有限会社の場合) |
⑧申請者が個人の場合に必要な書類 | ・資産目録 ・戸籍抄本 ・履歴書 |
なお、介護タクシーの運賃を設定するためには、運賃の認可を受けなくてはならないため、上記の書類の他にも運賃認可申請書を作成し、提出する必要があります。
まとめ
本ページでは、「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)許可」の申請方法と必要書類についてご紹介しました。
介護タクシーは多くの注目を集める一方で、開業時に不可欠な「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)許可」の取得をするためには、多くの書類を収集し、煩雑な手続きを経る必要があります。
「何から手を付ければよいのか分からない」「自分一人で準備を進めるのは不安だ」といったお悩みを持たれる方も多いのではないのでしょうか。
そのような場合には、行政書士に依頼することによって、煩雑な書類作成や手続きを任せることが可能です。
「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)許可」の取得に関してお困りの方は、行政書士に相談してみてはいかがでしょうか。