介護タクシーを始めたい!必要な資格と開業までの流れ

許認可

近年、高齢者の増加に伴って、体の不自由な人の移動をサポートする介護タクシーに注目が集まっています。

「今後、需要が増えそうだ」「困っている人を助けたい」という思いから、開業を考えている方も多いのではないでしょうか。

こちらでは、介護タクシーの開業時に必要な資格と、開業までの流れについてご紹介します。

介護タクシーとは?福祉タクシーと介護保険タクシーの違いとは

介護タクシーとは、自力で移動することが困難な高齢者・障害者の方の移動を支援するサービスのことを言います。

介護タクシーの中でも、ドライバーが利用者の介助を行わず、料金に介護保険が適用されないものを「福祉タクシー」と呼び、ドライバーが利用者の介助を行い、料金に介護保険が適用されるものを「介護保険タクシー」と呼びます。

介護保険タクシーは、主に要介護1から5の認定を受けた方のうち、介護保険タクシーの利用がケアプランに含まれている方が利用します。

種類内容
福祉タクシードライバーが利用者の介助を行わず、料金に介護保険が適用されない
介護保険タクシードライバーが利用者の介助を行い、料金に介護保険が適用される

介護タクシーの開業に必要な資格や許可

介護タクシーを開業する際には、いくつかの資格や許可を事前に取得しておく必要があります。

以下で詳しく見ていきましょう。

普通自動車第二種運転免許

普通自動車第二種運転免許は、運賃をもらって乗客を輸送する目的で、バスやタクシーなどの旅客自動車を運転する際に必要な免許です。

一般的に免許を持っていない方が自家用車等を運転するために取得するのは「普通自動車第一種運転免許」であり、この「普通自動車第二種運転免許」とは異なります。

普通自動車第二種運転免許を取得するには、第一種運転免許の取得から3年以上が経過し、視力・色彩識別・聴力などの条件を満たしている必要があります。

そして、第一種運転免許と同様に、試験に合格することで、取得することが可能です。

介護職員初任者研修(必須ではない)

介護職員初任者研修とは、介護職として働くうえで基本となる知識・技術の習得を目的とした研修です。

介護タクシーを開業するにあたっては、必ずしもこちらの研修を受講する必要はありませんが、介護タクシーを「介護サービスが含まれるタクシー」と認識している方も多く、歩行が困難な利用者の乗降を手助けする場面も少なくありません。

さまざまなニーズに応え、利用者の信頼を得るためにも、介護職員初任者研修を受講しておくことが望ましいと言えます。

上記研修は、9科目130時間の講義を受講したのち、カリキュラム達成後に実施される試験に合格することで修了します。

一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)許可

一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)許可とは、タクシーやハイヤーなど乗客定員が10人以下の車両を使用して行う旅客運送業のうち、利用者を「要介護者」「要支援者」などに限った事業を行う際に必要となる許可を指します。

こちらの許可は、申請にあたって必要な要件を満たしているかを確認し、営業所を管轄する運輸支局に申請することで、取得することが可能です。

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介護タクシーを開業するまでの流れ

介護タクシーを開業するためには、さまざまな手続きを経る必要があります。

以下で、その流れを詳しく見ていきましょう。

介護タクシー開業のための資金を用意

まず、介護タクシーを開業するための資金を用意します。

開業時には、車両代やタクシーメーター、備品購入、運転資金、車庫の料金などさまざまな経費が必要であり、250万円から450万円ほどの資金が必要であると言われています。

前述した「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)許可」を取得するうえでも、資金計画(営業を実施するうえで必要となる安定的な資金など)を提出する必要があり、資金準備は必須となります。

なお、介護タクシーの開業時に利用できる助成金や補助金も存在しており、

  • 福祉タクシー車両導入促進事業費補助金
  • 小規模事業者持続化給付金

などを活用することも可能です。(法改正などがあるため、細かい条件は都度確認する必要があります)

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資格の取得

開業資金の取得と共に重要なのが、ドライバーとなる方の資格の取得です。

上述の通り、介護タクシーを開業する際に必要な「普通自動車第二種運転免許」を取得し、「介護職員初任者研修」を受講しましょう。

開業する営業所の所在地を決めよう

資金や資格の準備が完了した後は、開業する営業所の所在地を決定します。

賃貸物件や自宅を所在地とすることも可能ですが、

  • 営業所の住所が事業を行う都道府県内にある
  • 土地・建物の使用権原が3年以上
  • 事務所や休憩・仮眠施設がある
  • 車庫の併設(併設できない場合は、営業区域内の半径2キロメートル圏内に確保)

などの要件を満たす必要があります。

介護タクシーの車庫を決めよう

営業所の所在地に加え、介護タクシーの車庫も決定します。

介護タクシーを設置する際には、

  • 車両の長さ・幅+1メートル以上のスペースの確保
  • 点検・整備・清掃のための水道施設の設置

などの要件を満たす必要があります。

法人設立

以上の用意が完了したら、株式会社などの法人として法務局で登記を行い、法人用口座を作成して税務署に届け出ます。

定款の事業目的には、「一般乗用旅客自動車運送事業」「介護保険法に基づく訪問介護事業」などの項目を忘れずに記載しましょう。

法人設立せず、個人事業主でも開業することは可能ですが、訪問介護事業所または居宅介護事業所の指定を受けるためには法人設立は必須です。

一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)許可の取得

法人の設立後は、運輸局から一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)許可を取得します。

上記のように営業所や車庫といった「設備要件」をはじめ、「人的要件」「資金要件」を満たしていることを確認したら、運輸支局へ許可申請書を提出します。

その後、申請者が法令試験と事情聴取を受け、運輸支局の審査を通過した場合には、許可証が交付されます。

そして、登録免許税(30,000円)を支払います。

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介護タクシーの車両登録

一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)許可の取得後は、介護タクシーの車両登録を行います。

許可の取得時に「事業用自動車等連絡書」を受け取り、運輸局で車両の検査を受け、介護タクシーに用いる車両を登録します。

この際に、車両の所有者名義は使用者ではなく、事業者でなければならないため、注意が必要です。

訪問介護事業所または居宅介護事業所の指定を受けよう

上記の手続きの完了後、必要に応じて、「訪問介護事業所」もしくは「居宅介護事業所」の指定を受けます。

これらの指定を受けなくても、介護タクシーを開業し、高齢者や障害のある方を運送することは可能です。

しかし、利用者へ介助を行い、介護保険の適用対象となる「介護保険タクシー」を開業することができません。

訪問介護事業所もしくは居宅介護事業所の指定を受けることで、事業の幅が広がり、お客様からの依頼を受けられる機会が多くなるため、お客様からの信頼につながります。

そのため、訪問介護事業所もしくは居宅介護事業所の指定を受けておいた方が良いといえるでしょう。

訪問介護事業所もしくは居宅介護事業所の指定を受けるには、

  • 法人要件:法人格を有している
  • 人的要件:管理者やサービス提供責任者がいる
  • 設備要件:手洗い場といった衛生的な環境の確保や相談スペースの設置など

といった要件を満たす必要があります。

詳細な要件や手続き方法は各都道府県によって異なるため、開業を予定している地域の要件を確認することが望ましいと言えます。​

損害賠償保険に加入しよう

介護タクシーを開業するにあたっては、損害賠償保険への加入も必要です。

介護タクシーは、運行によって生じた生命または身体の損害、そして財産の損害を賠償するため、「対人8,000万円以上、対物200万円以上」の任意保険または共済保険に加入することが義務付けられています。

なお、上記の基準は最低限の基準であり、一般的には対人については無制限、対物については1,000万円程度の保険に加入することが望ましいとされています。

運輸開始届を運輸局へ提出して介護タクシー開業の完了

上記の手続きがすべて完了したら、営業する地域を管轄する運輸支局に運輸開始届を提出します。

届出が受理されれば、介護タクシーの開業が完了します。

介護タクシーの開業のことは行政書士に相談してみよう!

介護タクシーを開業する際には、さまざまな労力がかかります。

膨大な量の書類を作成・提出し、多くの手続きを経なければなりません。

そして、書類の内容に不備があれば、その都度修正が求められます。

非常に手間のかかる介護タクシーの開業手続きですが、行政書士に相談することによって、さまざまなサポートを受けられます。

ご依頼者様に代わって書類の作成・提出を行うなど、開業までの労力を減らし、スムーズに開業準備を進めることが可能です。

介護タクシーの開業でお困りの方は、行政書士に相談してみてはいかがでしょうか。

行政書士に相談してみる

まとめ

こちらでは、介護タクシーの開業時に必要な資格および手続きをご紹介しました。

高齢化の進行にともない、ますます需要の高まりが予想される介護タクシーですが、開業までのプロセスは非常に煩雑です。

開業をお考えの方は、入念な情報収集と下準備を重ねたうえで、スムーズな開業を目指すことをおすすめします。

行政書士に相談してみる

この記事の監修者:行政書士 永江 広明(登録番号 第17080770号)