近年、小型無人機(ドローン)が、世間の注目を集めています。
ドローンは、第二次世界大戦中に軍事目的で開発されたものですが、1980年代には産業用のドローンも誕生しました。
しかし、よく耳にするようになったのは、2010年以降で割と最近のことではないでしょうか。
現在では、農薬の散布や空中からの映像撮影、インフラの点検など、さまざまな場面でドローンが活用されています。
そして、2022年12月5日に改正航空法が施行され、ドローンをはじめとする無人航空機の飛行レベル4を新たに認めるなど、さらに多くの分野でドローンの活用が期待されています。
この記事では、ドローンの飛行レベルのこと、飛行レベル4を実施するにあたって必要なものをご紹介します。
飛行レベルとは
飛行レベルとは、人口密度や機体の操縦方法などといった飛行形態をもとに策定された、ドローンを飛行させるうえで判断の区切りとなるものを指します。
飛行レベルは、以下の4段階に分かれています。
【飛行レベル1】目視内・操縦飛行
飛行レベル1は、「目視内・操縦飛行」です。
操縦者の目で見える範囲で、ドローンを手動で操作する利用形態を指します。
主に、農薬の散布や空撮、インフラの点検などがこのレベルに該当します。
【飛行レベル2】目視内・自動運転
飛行レベル2は、「目視内・自動運転」です。
操縦者の目で見える範囲で、ドローンを自動運転技術によって飛行させる利用形態を指します。
主に、空中写真測量やソーラーパネルの設備点検などがこのレベルに該当します。
【飛行レベル3】目視外・無人地帯で補助者なし
飛行レベル3は、「目視外・無人地帯で補助者なし」です。
手動・自動を問わず、無人地帯において操縦者の目で見えない範囲までドローンを飛行させる利用形態を指します。
また、飛行レベル3では、補助者(ドローンの監視や操縦者への助言、飛行範囲に第三者を立ち入らせないための注意喚起などを行う)を配置しません。
主に、離島や山間部への荷物配達や被災状況の調査、河川の測量、広範なインフラの点検、行方不明者の捜索などがこのレベルに該当します。
【飛行レベル4】目視外・有人地帯で補助者なし
飛行レベル4では、「目視外・有人地帯で補助者なし」です。
手動・自動を問わず、有人地帯において操縦者の目で見えない範囲までドローンを飛行させる利用形態を指します。
また、飛行レベル4でも、補助者を配置しません。
主に、都市部の物流やインフラ点検、警備、災害時の救助・避難誘導・消火活動の支援などが該当します。
従来は、事故のリスクの高さなどから、「目視外・有人地帯で補助者なし」という飛行方法は認められていませんでした。
しかし、2022年12月5日に改正航空法が施行され、必要な認証や許可承認を取得することによって、ドローンなどの「目視外・有人地帯で補助者なし」という飛行方法が認められるようになりました。
飛行レベル4の実現で物流がより便利になる
飛行レベル4が実現したことによって、今後はさまざまな場面でドローンの利用が増加することが考えられます。
以下では、飛行レベル4の解禁によって、特に物流の分野で利便性の向上が期待できることを、5点ご紹介します。
配送に必要な人材不足解決
1点目は、配送に必要な人材不足の解決です。
近年、スマートフォンなどで手軽に購入できるECサイトの利用が増加しているのに対し、荷物を運ぶトラックドライバーの人数は不足している状況が続いています。
このような状況が改善されなければ、必要な時に荷物が届かない、といったリスクも想定されます。
しかし、ドローンが輸送を担うことによって、ドライバーがいなくても荷物を運ぶことが可能となり、ドライバー不足といった状況の改善が期待されるのです。
燃料のコスト削減
2点目は、燃料のコスト削減です。
現在、世界的な原油価格の高騰にともない、トラックの燃料となる軽油の値上げが続いています。
燃料コストの上昇は、運送会社の経営危機を招くだけではなく、輸送料が高騰するなど、私たちの生活にも影響をもたらします。
しかし、ドローンの飛行には軽油などを必要としないため、燃料コストの削減も期待されるのです。
環境問題にも良い影響
3点目は、環境面への配慮です。
従来から物流で使用されてきた飛行機やトラック、船などは、運航にあたって多くの二酸化炭素を排出します。
それにより、環境に大きなダメージを与え続けています。
しかし、ドローンが物流の一端を担うことで、飛行機やトラック、船などの利用頻度が低下し、環境に対する負荷の軽減も期待されるのです。
渋滞などによる配送遅延が改善される
4点目は、渋滞などによる配送遅延の改善です。
飛行機やトラック、船などは、渋滞や事故、天候の悪化の影響を受けることで、配送の状況に乱れが生じる場合があります。
それによって、予定された配達時間を大幅に過ぎてしまう、といったことも起こる可能性があるのです。
しかし、ドローンは上記の輸送手段とは異なり、渋滞の影響を受けづらいことで、配送遅延の改善も期待されるのです。
田舎暮らしも便利で豊かになる
5点目は、過疎地や山間部などにおける利便性の向上です。
都市部とは異なり、過疎地や山間部などの地域は、アクセスの悪さなどから輸送に時間がかかることが少なくありません。
また、自身で買い物に出かけようと思っても、特に移動手段のない高齢の方にとっては、非常に手間がかかります。
しかし、ドローンはこれらの地域に対しても輸送が可能であり、そこに住む方々の利便性の向上も期待されるのです。
飛行レベル4を実現するために必要なものとは
飛行レベル4を実現するためには、機体認証・無人航空機操縦者技能証明書・無人航空機の運行ルールの遵守の3点が必要です。
以下で詳しくご説明します。
機体認証
機体認証とは、ドローンなどの無人航空機の強度・構造・性能について、設計・製造過程・現状が安全基準に適合するかを検査し、安全性の確保を目的とした認証制度を指します。
なお、メーカー等が設計・製造した量産機のドローンが型式認証を受けていた場合には、機体認証の一部若しくは全部が省略されます。
機体認証を取得する際の手続きは、まず申請書に必要事項を記載して提出し、手数料を納付します。
次に、申請が受理されれば、検査が実施されます。
検査は、提出された書類の確認や、実地検査が行われます。
そして、検査の結果、安全基準に適合している場合には、国土交通省から機体認証書が交付されます。
無人航空機操縦者技能証明書
無人航空機操縦者証明書とは、ドローンなどの無人航空機を飛行させるために、必要な知識および能力を有していることを証明する資格制度を指します。
無人航空機操縦者技能証明書を取得する際の手続きは、まずオンライン上で本人確認手続きを行います。
手続きの完了後、講習受付や試験受付などで使用する「技能証明申請者番号」の取得が可能となります。
その後、登録講習機関で無人航空機に関する知識や能力についての学科、実地の無人航空機講習を受講します。
講習の受講後、指定試験機関で学科試験・身体検査を受験します。
なお、講習を受講せずに試験を受けることも可能ですが、学科試験の合格後に実地試験が課されるため注意が必要です。
試験の合格後、国土交通省に対する技能証明書の交付申請をオンライン上で行い、手数料と登録免許税を納付します。
これらの手続きの完了後、技能証明書が郵送で届きます。
無人航空機の運航ルール
無人航空機を安全に飛行させるにあたっては、以下の4つのルールを遵守しなければなりません。
1つ目は、飛行計画の通報です。
飛行の許可・承認の申請手続きを行い、飛行計画の通報を行った後でドローンを飛行させます。
飛行の日時や経路、高度などを記載した飛行計画を国土交通大臣に通報し、他の無人航空機の飛行計画と重複してはなりません。
2つ目は、飛行日誌の記載です。
飛行日誌には、①飛行した内容、②飛行前点検の結果、③定期的な点検の結果や整備・改造の内容、の3点を記載しなければなりません。
3つ目は、事故・重大インシデントの報告です。
事故(人の死傷、物件の破損、航空機との衝突または接触)や重大インシデント(制御不能、発火、人の負傷、航空機との衝突または接触の恐れ)が発生した場合には、日時・場所・事案の概要を、国土交通大臣に報告しなければなりません。
4つ目は、負傷者発生時の救護義務です。
負傷者が発生した場合、ただちに飛行を中止し、必要な措置を講じなければなりません。
具体的には、負傷者の救護、消防や警察への連絡などが挙げられます。
まとめ
ここでは、ドローンの飛行レベルや、飛行レベル4を実現するにあたって必要なものについてご説明しました。
今後、ドローンは私たちの生活のさまざまな場面で活用されることが期待されています。
上述の物流の他にも、災害発生時の救助やスポーツ・コンサート・報道などの中継、映画やコマーシャルの撮影など、その活用法は多岐にわたります。
そして、ドローンの活用にあたっては、認証制度などを設けることで、安全な利用を促しています。
特に、飛行レベル4は実現されたばかりであり、手続きの方法に不慣れな方も少なくありません。不慣れな場合には、行政書士に相談することによって、書類の作成や手続きの代行などを依頼することも可能です。
お困りの際は、行政書士やドローンの専門家に相談してみてはいかがでしょうか。