一般社団法人とNPO法人は、「非営利法人」であるという点では共通しています。
しかし、両者には活動内容や設立までの手続きなど、さまざまな面で違いがあります。
ここでは、一般社団法人とNPO法人の違いについて説明します。
非営利法人とは
非営利法人とは、獲得した利益を構成員に分配することを目的とせず、社会貢献活動に利用することを目的とする団体を指します。
株式会社などの営利法人は、売上から経費を差し引いて利益が発生した場合に、株主など出資者にその利益を配分することが可能です。
これに対して、非営利法人は、売上の中から経費として職員の給与を支払うことは可能ですが、残りの利益を会員や寄付者などに還元できません。
一般社団法人とNPO法人の違いを表で解説
非営利法人である「一般社団法人」と「NPO法人」には、異なる点が多く存在しています。
両者の主な相違点は、以下の表のとおりです。
一般社団法人 | NPO法人 | |
---|---|---|
設立に要する期間 | 2~3週間 | 3~5カ月 |
設立に必要な人数 | 2人以上 | 10人以上 |
設立に必要な役員数 | 理事1名のみでも可 | 理事3名以上 監事1名以上 |
役員の親族規定 | なし | あり |
設立に必要な費用 | 約11万円 | 0円 |
書類作成の難易度 | 低い | 高い |
活動内容の制限 | なし | 特定非営利活動のみ |
社員の入会制限 | 任意で設けられる | 設けてはならない |
所轄庁 | なし | 都道府県・政令市 |
所轄庁への報告義務 | なし | あり |
情報公開の義務 | なし | あり |
対象となる民間の補助金 | 少なし | 多い |
支援プログラム | あまり存在しない | 多い |
税法上の優遇 | 非営利型ならば NPO法人と同じ | 税法上の収益事業のみ課税 |
法人格のステップアップ | 公益認定制度あり | 認定NPO法人制度 |
イメージ | 共益 | 公益 |
一般社団法人とNPO法人のメリットとデメリットとは
一般社団法人とNPO法人には、それぞれメリットとデメリットが存在しています。
一般社団法人のメリット
一般社団法人の主なメリットは、以下の2つです。
設立が容易
1点目は、設立までの手続きが容易なことです。
一般社団法人は、設立時に都道府県からの認可を必要としていません。
必要な手続きは、法務局での登記手続きのみであり、迅速に設立することが可能なのです。
また、一般社団法人は少人数での設立が可能です。
具体的には、社員が2人以上、理事が1人以上必要であり、社員と理事は兼任が認められていることから、2名以上の人数が集まれば設立できます。
つまり、小規模な団体にとっては人数を集めるハードルが低く、容易に設立することが可能なのです。
事業内容に制約がない
2点目は、事業内容に制約がないことです。
一般社団法人は、「余剰収益を分配しない」という条件を担保すれば、どのような事業でも行うことができます。
公益的な事業だけではなく、収益を上げる事業、法人内部の共益を目的とする事業などを行えるなど、幅広く活動を行うことが可能なのです。
一般社団法人のデメリット
一般社団法人の主なデメリットは、以下の2つです。
設立時に金銭的負担がある
1点目は、設立時に金銭的な負担がかかることです。
一般社団法人を設立する際には、さまざまな費用を負担する必要があります。
具体的には、公証役場では定款用収入印紙代・定款認証手数料・謄本手数料を支払う必要があります。
また、法務局では登録税を支払う必要があります。
これらの費用をすべて合計すると約11万円ほどであり、NPO法人と比べれば、設立時の費用がやや高いといえます。
税制上の優遇が受けられない場合がある
2点目は、税制上の優遇を受けられない場合があることです。
一般社団法人には、「非営利型法人」に該当するものと、該当しないものに分けられます。
非営利型法人に該当する一般社団法人は、非収益事業には法人税が免除されるなど、NPO法人と同様の税制上の優遇を受けられます。
しかし、非営利型法人に該当しない一般社団法人は、株式会社などと同様に全ての所得に課税され、寄付金や会費収入にも課税されるなど、税制上の優遇が受けられないケースが存在するのです。
NPO法人のメリット
NPO法人の主なメリットは、以下の2つです。
設立までの金銭的負担が少ない
1点目は、設立までの金銭的負担が少ないことです。
NPO法人を設立する際には、申請に手数料が発生しません。
それに加えて、最低資本金制度が存在せず、定款作成に関する費用もかからないため、金銭的な負担をあまりかけずに設立することが可能なのです。
金銭的なサポートが多い
2点目は、受けられる金銭的なサポートが多いことです。
NPO法人の目的が社会的な利益の追求であることから、各税目に軽減措置や免除が行われています。
具体的には、「特定非営利活動」に分類されている事業については法人税が課されないことから、会費や会費などの収入に対する課税が免除されています。
その他にも、認定NPO法人への寄付金が寄付者の控除の対象となるなど、さまざまな税制上の優遇を受けられるのです。
また、NPO法人の活動を支援するための補助金や助成金が充実している点も金銭的に恵まれている部分です。
事業を行うにあたり補助金や助成金を活用することで、自己資金のみではできなかった試みに挑戦できるケースも存在します。
NPO法人のデメリット
NPO法人の主なデメリットは、以下の2つです。
設立までに時間を要する
1点目は、設立までに多くの時間を要することです。
NPO法人は、国民による精査や認可が必要であることから、設立までには非常に時間がかかります。
具体的には、都道府県や政令市などの所轄庁へ申請書類を提出したあと、「縦覧」(申請の内容を市民の目で点検するため、その内容がインターネットや公報で公開されること)を行い、所轄庁の審査が行われます。
その後、審査が認定されると、法務局へ登記申請を行います。
これらの手続きは、3~5カ月と非常に長い期間を要するのです。
また、NPO法人を設立する際には、十分な人員が必要です。
具体的には、10名以上の社員、3名以上の理事、1名以上の監事を設置しなければなりません。
小規模な団体にとっては、活動に賛同する人を集めるハードルが高く、設立までに時間を要する原因となってしまうのです。
事業内容が限定される
2点目は、事業内容が限定されることです。
NPO法人は、法律で決められた「特定非営利活動」を行う必要があります。
具体的には、社会教育の推進、保健・医療・福祉の増進、観光振興、災害救援など、20種類の分野が該当します。
NPO法人は、活動を行う分野を定款に記す必要があり、基本的には定款に記載のある事業のみを行っていくこととなります。
なお、特定非営利活動に必要な資金・運営費に充てるため、活動に支障が出ない範囲で特定非営利活動に係る事業以外の事業を行うことは可能となっており、認証手続きなどやや時間がかかりますが、活動を行う分野に係る定款変更も可能となっています。
一般社団法人とNPO法人で迷っている方にアドバイス
以上のように、一般社団法人とNPO法人には多くの違いが存在しています。
一般社団法人は、事業内容が幅広く、設立までの手続きが容易であることが特徴です。
そのため、「少ない人数でもすぐに活動を開始したい」、「さまざまな活動を行いたい」とお考えの方は、一般社団法人が適しているのではないのでしょうか。
それに対して、NPO法人は、手続きに時間を要する一方で、さまざまな金銭的なサポートを受けられることが特徴です。
そのため、「活動内容が決まっており、入念に準備を重ねて活動を始めたい」、「寄付等も募りながら運営したい」などとお考えの方は、NPO法人が適しているのではないのでしょうか。
まとめ
ここでは、一般社団法人とNPO法人の違いについてご説明しました。
これらの非営利法人は、公益的な事業をはじめ、さまざまな役割を果たしています。
非営利法人の設立や手続き代行は行政書士をはじめとする専門家が対応可能です。
一般社団法人やNPO法人の設立をお考えの方は、専門家に相談してみてはいかがでしょうか。